東京高等裁判所 昭和60年(ラ)423号 決定
担保権の実行としての不動産競売事件における売却許可決定に対し、担保権が不存在であることを理由として執行抗告をすることができるかについて検討する。
たしかに、民事執行法は、その一八八条において七四条二項を準用し、七一条一号に掲げる事由(「競売の手続の開始又は続行をすべきでないこと。」)があるときには、担保権の実行としての不動産競売事件における売却許可決定に対し執行抗告をすることができるとしている。しかし、同法は、民事執行の手続上の瑕疵について、特別の定めがある場合に限り、執行抗告をすることができる(一〇条一項)こととして、民事執行の手続の迅速な完結を図っているのであって、そのような同法の趣旨によれば、担保権の不存在は右に掲げる事由(「競売の手続の開始又は続行をすべきでないこと。」)に当たらないと解すべきである。このように解したとしても、債務者または不動産の所有者は、担保権の不存在を理由として、不動産競売の開始決定に対し執行異議の申立てをすることができる(一八二条)から、その権利の保護に欠けるということはできない。
そして、他に担保権が不存在であることを理由として執行抗告をすることができると解すべき根拠はない。
(櫻井 増井 河本)